朝、玄関を空けると家の前に車が止まっていた。
もう紫。すっごい紫。真紫。

「ギィィーバッタァァーン・・・!」

開いたドアを無表情で閉めた。嫌な予感がしたのだ。悪寒に近い。
てめぇはヤンキーの走り屋か。でなければ、こんな色の車を好んで乗り回す人間をあたしは一人しか知らない。
「映画観に行くのは明日でいいや・・・」
クーラーの利いたリビングに戻るとそこには三人の女がそ知らぬ顔でお茶を飲んでいる。
「結城さん、ちゃんと戸締りせなあきませんえ、最近物騒やさかい」
「全くだ、無用心すぎて馬鹿は困る」
「奈緒ちゃん・・・あたし、止めたんだけど・・・」
ちょっと待て、アンタらどこから入った。


静留さんとドライブ☆
〜あたしン家の前でヤンマーニやめれ編〜



とりあえず戸締りには気をつけようと心から誓った。こういうバカ共が世の中に入るから。
季節はお盆。あたしは仮退院中の母さんと一緒に実家に帰ってきていた。
「ほな、いきましょか」
「は、どこに」
「ひょらいふだ」
「ナニ言ってるか聞こえなってかテメェ人ん家のアイス勝手に食ってんじゃねえよぉぉお!」
「なつきはポッキン派かーうちの家じゃこれチューチューって呼んでたんだよね」
「うちはボンボン・・・ってあんたもよ鴇羽!」
「はいぃぃいっっ?」
話を聞いて見ると、藤乃・玖珂・鴇羽の三人はあたしを連れてドライブに行こうというつもりらしい。行き先については「お楽しみだから」と言って教えてくれない。
「昨日おうちに電話したらお母さんでましてなぁ。そりゃあ喜んではったんよ、『うちの子よろしくお願いします』言うて」
そうか、今朝キッチンに残されていた
「奈緒へ 母さんは今日、久々に友達に会いに行ってきます。奈緒もファイト☆」
というテンションの意味不明な書き置きの理由がわかった。
「行かない。ずぅぇっっっ・・・たい、行かない。」
顔をしかめて全力で拒否の意を示す。ゲロゲロって感じだ。考えただけでウザい。
「あら、行かへんの?」
藤乃が露骨に残念そうな顔をする。この世の終わりみたいな大げさなため息をつく。
「そかそか・・・・嫌やったらしゃあないなぁ〜・・。なつき、諦めて三人で行こか」
「ん、わかった」
「じゃ、お邪魔しました」
やけに諦めがいい。思ったよりも拍子抜けだ。三人が家を出て行ってホっとした次の瞬間。









「かぁ〜ぜがぁー吹いたあだけでぇ・・・」




ん?遠くからスピーカーを通した声が聞こえる。




「ちぃいりゆくさだめでもぉおー想いはとまーらないぃー燃えて燃え尽きてぇ〜・・・」



明らかに町内放送ではない。この声聞き覚えある気がするし。しかもついさっき聞いたぞコラ。


「いいぞー静留」
「会長さんマジ倖田來未並みのエロカッコよさです!」
「もっともっと輝けるわバタフライどすえ」
「じゃあ次は私が『ヤンマーニ』歌うからな」
「あの曲テンションあがるもんねぇ〜」
「かわかわYUUKA、かわかわなつきどすなぁ」



ドタドタドタドタドタドタ・・・・バッターーーーーーン!!
「てめぇえらぁああ!人様の家の前で何カラオケ大会やってんのよぉぉおお!」
「あら、結城さん」
「なんだ素直じゃないな。混ぜて欲しいなら素直に言えばいいじゃないか」
「逆ギレするなこの馬鹿!マヨ狂い!!」
「大丈夫、『イノセント』の台詞はちゃーんと奈緒ちゃんに譲ってあげるから」
「あたしを見ないで・・・・!っつーか来ないで!どっか行ってお願いだから」


かくして、こいつらの馬鹿騒ぎを止めるためにあたしはドライブに付き合わされることになってしまったのだった。
・・・・・・・・・・・・・・・・・マジ死にたい。


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