放課後、突然薔薇の館に召集命令がかかった。何事か。 私は剣道部の打ち合わせを早く切り上げて授業が終わるなりあの古い建物へすっ飛んでいった。 部屋についてビスケット扉を開けるとすでにみんな椅子に座っていた。 全員が一斉に私のほうを向く。ちと怖い。 「ついに来たわね、主役が。」 「えぇ、ついにね」 「・・・・はぁ?」 私はたまらず聞き返す。 「いいから、早くお座りなさい。令」 祥子がマジだ。なんだこの真剣な雰囲気。 彼女だけじゃない。いまや薔薇の館にはピンと張り詰めた空気のようなものが漂っていた。 ____もしや、緊急事態!? 「それではみなさん_____」 祥子が指揮をとる。一体、何を切り出すのか。喉がゴクリと鳴る。 「今からHYK・・・・・通称『へた令についてやいのやいのする会議』を始めます」 なんじゃそりゃあ。 〜へた令についてやいのやいのする会議〜 「とりあえず乃梨子ちゃん、前回のまとめから」 ポカンとオープンマウスしてしまっている私を尻目にさっさと祥子は話を進めようとしている。 「・・・はっちょっちょっちょとちょっと待った何ちょっと何そのなんとか会議って何!」 「噛みすぎあなた。『へた令についてやいのやいのする会議』よ。はいリピートアフターミーへたれいにつ」 「ちょっと話をきけっ」 取り乱す私を見た祐巳ちゃんがおろおろしながら助け舟を出した。 「だ、だってお姉さま、令様は今回初出席でしょうHYKには。説明して差し上げたほうがよろしいかと」 「あら、そういえばそうね。」 ナイス祐巳ちゃんナイスよ。私は思わず「YES!」とガッツポーズした。ちなみに発音は抜群だ。 「いいこと?令。このHYKは今や支倉令のアイデンティティーともいえるへたれ加減について逐一報告しあいその経過を観察することにより対策案を発案し発表、どのようにしてあなたのへた令を克服するか、なんてことは本当はどうでもよくてむしろ令はへたれてなんぼ、へたれてこそ令(by江利子)のスローガンのもとあーだこーだと意味もなくやいのやいの無駄に騒いで愚痴ってお茶飲んで終始する会議です。」 「意味ねぇーじゃん」 「んもう、馬鹿ね、意味の無いことのほうが世の中素敵だと思わない?」 思わない。全然思わないよ。ロマンチストぶられましても。 「では説明も終わったので乃梨子ちゃん、前回の報告を」 「はい。」 ガタン、と立ち上がった乃梨子ちゃんの右手には分厚い書類束が。 「では、前回の第46回HYKについてご報告いたします」 46回もやってたのかお前ら。 「〜へた令と行く!3泊4日・夏の軽井沢☆ツアー〜が前回のテーマでしたが、祥子様の『ぶっちゃけ軽井沢って好きじゃない』の一言によりあえなく議題は却下。その後由乃様の『最近へた令はチョヅいてます。あ、チョヅいてるっていうのはいわゆる調子こいてるってことでまぁ要するにムカつきます。ちさとに手をだしたばかりか相変わらず回りのミーハー追っかけにも愛想が無駄に良くて腹立ちます。ここらでいっちょシめるべきです。ミスターリリアンとか言ってる場合じゃねぇよテメェって誰かつっこんでやって下さい。』という案が出まして志摩子さんより『銀杏とか投げてつっこんでみてもいいですか』という対策案が出ました。しかし『いや銀杏は秋だし』という祐巳様の一言により却下。そうこうしてるうちに下校時間になって『あ帰っていいすか。今日コナン見たいんで』という私の一言で解散が決定して帰りました。以上」 うわいいかげーん。もしかして私のことどうでもよさげ? 「そんなとこで終わってたっけ?志摩子さん」 「いいえ、全然覚えてないわ祐巳さん」 ・・・ムカつくなこいつら。 「そう、有難う乃梨子ちゃん。では黄薔薇のつぼみ、昨日のへた令の一日の動向を報告して」 「はい祥子様。」 由乃は待ってましたとばかりにガタターンと立ち上がった。いやな予感がする。 「7時15分に起床。これはいつもより10分ほど遅めです。前夜の夜中1時20分に放送してたドラゴンボールの再放送を完全に見てしまったのが原因だと思われます。ちなみに内容は天下一武道会でタオパイパイと戦うあたりでした。8時に私と登校を始め8時25分に学校着。会話の内容は『小さい頃集めてたZのカードダスが見つからない』という話と『祥子のアホ毛最近またすごくなってきてる』という話でした。その日の時間割は1時間目から順に国語数学生物体育日本史英語。ちなみに4時間目の体育のサッカーではハットトリックを決めてます。お昼ごはんは手作りのから揚げ弁当だったようです。放課後部活動の後7時半に私と帰宅。その日の支倉家の晩御飯はピーマンの肉詰めとひじきの煮物と味噌汁でした。ピーマンが得意でない令ちゃんはお母さんに愚痴ってます。その後父の次に2番目に風呂に入り少々長風呂してのぼせてたみたいです。風呂からあがって9時半から11時半まで翌日の英語と数学の予習を行いベットに入ったのが11時40分。寝言は『・・・・・ぅん・・違うってナメック人は哺乳類じゃないって・・・・・』だったのでおそらく前日に見たドラゴンボールが夢に出てきたのではないでしょうか。」 矢継ぎ早にまくし立てると満足げに由乃は座った。なんだあの勝ち誇った顔。ていうか私かなりストーキングされてるじゃーん。 「ちょっと由乃ちゃん、質問したいことがあるのだけど」 「何ですか祥子様」 「・・・・ナメック人は何類なのかしら?」 「・・・・・ナメクジがモデルだから両生類じゃないでしょうか」 あ、そうなんだー納得。へぇへぇへぇへぇへぇへぇ。 「・・・か、感心しとる場合じゃなかった。」 やばい。私までこの場の異様な空気に汚染され始めているのでは。 「由乃ちゃん、ヤツのヘタレ加減は相変わらずかしら?」 「はい、もうすさまじいです。この間なんか稲垣五郎のイワコデジマの怖いヤツ見て泣いてましたよ本気。ちょっと正直ヒきました。」 「なっ失礼な!だって本当怖かったんだか」 「18にもなって怖い話でグズってんじゃねーよヴァカ」 この子去年まで心臓病とかで死にかけてませんでしたっけ。え、別人? 「そう、相変わらずなの・・・困ったものね、ここまで改善が見られないとなると」 祥子が大げさにため息をついている。ため息つきたいのはこっちだヴァカ。うわーん。 「こうなったら、もう、令には死んでもらうしかないわね」 はい? 「えぇ、残念ながら」 「馬鹿とヘタレは死ななきゃ治りませんから」 「御免なさい、令様」 ちょっと、なに何持ってんの君たち電動ノコギリとか刃渡り28センチのサバイバルナイフとかワルサーP38とかどこで入手してきたんだぎゃあああああああマジちょっと待って待ってまだちょっとタンマタンマだってばあああああああああ殺られる!死ぬからちょっとそれ死ぬからマジで!シャレならんて祥子さーちーこやめてさーちーこ。さっちゃああああああああんん 「うん・・・うぅ・・・はっ!!」 目が覚めた。ベッドの上。ここは私の部屋だ。 「ゆ・・・・夢?」 自分の頬をつねりながら確認する。うん、どうやら夢オチだこの話。 「よ、よかったぁ・・・・」 キングオブヘタレの私はちょっとちびってしまってます。 放課後、突然薔薇の館に召集命令がかかった。何事か。 私は剣道部の打ち合わせを早く切り上げて授業が終わるなりあの古い建物へすっ飛んでいった。んちょっと待ってくださいよなんかこの感じ何処かで体験した感じ。いやいやいやいやいや。 部屋についてビスケット扉を開けるとすでにみんな椅子に座っていた。全員が一斉に私のほうを向く。 「あ・・・・あの・・・」 「何かしら?令」 「こ、これはHYKなんでしょうか」 たまらず聞いてしまった。どうやら正夢だったらしい。そうかこういうオチですか。 「???エイチワイケー?何言ってるの?貴女・・・」 あぁそうですよねそうですよねそんなわけないですよねあぁよかった_______!! 「では今からDAS______『ダメ令についてあーだこーだ愚痴ろう総会』を始めます」 アイタタタタタだめだこりゃー。 |
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